2004パシフィック・リーグ プレーオフ第2ステージ VS福岡ダイエーホークス 第5戦

いよいよ迎えた決戦の朝。確実に疲れが溜まってはいるものの、気持ちよく目が覚める。

昼に父親から「がんばれよ」と声をかけられて(そんな父親は別にライオンズファンというわけではない)、出発。



勝てば、悲願の地元福岡で、ホークスの目の前での胴上げ。負ければ、宿敵の胴上げを目の当たりにすることになる。




史上最高の歓喜の瞬間を得るか、史上最悪の屈辱の瞬間を迎えるのか、まさに2つにひとつの大勝負。



いざ、プレイボール。

両チームのラインアップ

先攻のライオンズ
1番ライト佐藤友亮、2番センター赤田将吾、3番サードホセ・フェルナンデス、4番DHアレックス・カブレラ、5番レフト和田一浩、6番ファースト貝塚政秀、7番ショート中島裕之、8番キャッチャー野田浩輔、9番セカンド高木浩之。先発ピッチャーは余裕を持っての6回降板の第2戦から中3日のエース・松坂大輔。キャッチャーが昨日のクロスプレーでケガをし、登録抹消の細川に代わり、野田が入る。それ以外は昨日と変わらぬオーダー。

後攻のホークス
1番センター柴原洋、2番ライト宮地克彦、3番セカンド井口資仁、4番ファースト松中信彦、5番キャッチャー城島健司、6番レフトペドロ・バルデス、7番DHフリオ・ズレータ、8番サード鳥越裕介、9番ショート川粼宗則。先発ピッチャーは第1戦での勝ち投手から中4日・新垣渚。昨日登場の出口に代わって宮地が戻り、2番へ。そして、昨日2番の柴原は1番へ入る、以外は変わらぬオーダー。


1回表、新垣がマウンドへ登る。先頭は佐藤。
プレイボール!!!
佐藤は初球打ちでセカンドゴロで1アウト。続く赤田はファーストゴロで早々と2アウト。フェルナンデスも初球打ちのファーストファウルフライで三者凡退。

1回裏、中3日のエース・松坂大輔がマウンドへ上がる。先頭は柴原。セカンドゴロに打ち取り、1アウト。宮地を空振り三振、井口にはフォアボールを与えて、2アウト1塁でいまだ初戦の1安打のみの松中。結局2-3からセカンドゴロに抑えて3アウト。両チームともに最終戦らしく、静かな立ち上がりとなった。

2回表、先頭のカブレラは叩きつけてキャッチャーゴロとなり、1アウト。和田は2-3から見逃し三振、貝塚も2-3からセカンドゴロで三者凡退。

2回裏、先頭バッター・城島は強烈なセカンドライナー。バルデスもセカンドゴロと抑えて2アウトも、続くズレータには三遊間を抜かれ、2アウト1塁。しかし、鳥越はショートゴロ・セカンドフォースアウトで3アウト。
新垣は6者パーフェクトに対し、松坂は2人ランナーを出した。序盤の投球は新垣に分があるか。

3回表、先頭の中島はファーストゴロ、野田はライトフライでこの回も2アウトランナーなし。ここで、高木がフォアボールを選んで、これで初のランナー。しかし、佐藤は空振り三振に倒れ、3アウト。

3回裏、先頭の川粼はショートゴロで1アウト。柴原もキャッチャーファウルフライ、宮地は初球打ちでサードゴロとなり、三者凡退。

4回表、赤田はレフトフライ、フェルナンデスもセカンドフライで2アウトから、カブレラは二遊間を抜いてセンター前ヒット。チーム初安打で2アウト1塁。続く和田もレフトオーバーのフェンスダイレクトのシングルヒットでチャンス拡大。2アウト1・3塁で迎えるは貝塚。しかし、初球打ちでセカンドゴロに抑えられ、3アウト。両チーム通じての初のチャンスも活かせず、チェンジ。

4回裏、打順はクリーンアップへ。先頭の井口は初球打ちでファーストフライ、松中は大きなセンターフライで2アウト。ここで迎えるのは城島。
2-1からの4球目。城島が打った打球はセンター左へ。レフトスタンドからも伸びてくるのがわかる。

「まずい……」


その予感は的中し、スタンドイン。スタンド全体が沸きあがる。
1点を先制され、自分の心中は「あらぁ〜」という感じに。先制点を取った方が勝っているというデータも入ってただけにちょっとつらい。


松坂は、動揺したか、続くバルデスにもフォアボールを与えて、2アウト1塁。
迎えたズレータの初球。振りぬいた打球が右中間へ飛ぶ。

「まずい…」

またも予感的中。フェンスダイレクトのヒットに。これなら帰ってこられるかもしれない。

ここで、センターの赤田が早いカバー、中継の高木へ。この段階でバルデスは3塁付近。



「刺せ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」


そして、高木はホームへ送球。

そのボールは野田のミットへ。


バルデスはキャッチ後にホームへ滑り込む。






主審の大きな動き。「アウト!!!!!」



中継プレーで2点目は阻止した。しかし、城島のHRで1点は失う。さぁ、いかにして追いつくか。試合は5回へ。


5回表、先頭の中島はライトフライ。続く野田は二遊間を抜くセンター前ヒットで1アウト
1塁に。高木は粘るもサードゴロでセカンドフォースアウトで2アウト1塁。ここで、早くもライオンズは早い攻勢に。ここ2打席悪かった、佐藤に代わり、代打・第2ステージに来て登録された、小関竜弥。トランペットのジーパン刑事のテーマが流れる中、打席へ。しかし、サードファウルフライに倒れて、結局3アウトに。

5回裏、代打に入った小関はそのままライトのポジションへ。依然、マウンドには松坂。先頭の鳥越はセカンドゴロで1アウト。川粼も見逃し三振で、この回も順調に2アウトまで重ねる。しかし、柴原にはセンター右へ落とされる。柴原は2塁まで到達し、2アウトながらランナー2塁のピンチに。ここでバッターは宮地。
0-2からの3球目。宮地が打った打球はファーストのダイビングが届かず、ライト前へ。

またもや、スタンドが沸きあがる。

「オイオイ…」

当然、2アウト2塁でそこそこの守備位置だったためにランナー柴原はホームへ。

小関はすばやくキャッチして、ホームへダイレクトのバックホーム


「刺せ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」



その送球を野田がキャッチ。そして、完璧なブロックで、突っ込んできた柴原を弾き飛ばす。


もちろん判定は



大きなジャッジで、「アウト〜〜〜〜〜〜!!!!!」

先ほどのイニングに続き、追加点を阻止。この流れが来るか。


5回のグランド整備の間に祈りを目の前のダルマに祈りを捧げる。

「勝たせてくれ」



そして、整備が終わり、6回の攻撃へ。



6回表、マウンドには引き続き、新垣が登る。先頭は赤田。赤田の放った打球はレフト前に落ちて、この試合を通じて、初めて先頭打者が出塁。
「もう、この回に点が取れなきゃ、100%負けるぞ」
続いてはフェルナンデス。1-3から慎重にフォアボールを選んで、ノーアウト1・2塁。絶対に取らなきゃいけない。

バッターは4番のカブレラ
「何とか打ってくれ…」
しかし、どん詰まりのファーストゴロ。「危ない!」ただ、詰まり過ぎたため、ファーストアウトが精一杯。結果、両者進塁で1アウト2・3塁に。

続く和田には敬遠のフォアボール。和田へ投げている最中、次のバッター貝塚へ「打ってくれ」と願いをこめる。


和田が歩いて、1アウト満塁。この試合、初めてといってもいいような大きな大きなチャンス。


ここで、ライオンズは調子の上がらぬ貝塚に代えて、代打・昨年トレードで移籍し、今年そのバッティング能力を見せ付けた、石井義人が登場。

「打ってくれる。絶対に、打ってくれる」

ライトからは「がんばれ、がんばれ、新垣」コール


初球はバックネットへファウル。
2球目はボール。
3球目も後方へファウル。
4球目は3塁側スタンドへファウル。
5球目はボールとなって、2-2。

迎えた6球目…
石井が振りぬいた打球はレフトへ大きな当たり。

こっちへ飛んでくる。


「入れ、入れ、入れ!!!」


スタンドには入らなかったものの、レフトのバルデスはこちらを向いている、スタンドは悲鳴にも似た声が。

フェンスダイレクトのタイムリーヒット


3塁ランナーの赤田がホームイン、そして、逆転のランナーとなるフェルナンデスもホームイン!!!!
これで逆転!!!!!!!

願いが通じた……


さらに1アウトでランナーは2・3塁。まだまだ、もう1点、もう1点。



続く中島は再び敬遠で、1アウト満塁で迎えるバッターは野田。

初球はボール。
2球目もボールで0-2。
3球目はストライク。
4球目もストライクとなり、2-2と追い込まれる。

5球目、野田が打ち上げた打球はレフトへ、そこそこ距離のあるフライ。


「よし、充分」


レフトのバルデスが、フェンス付近でキャッチ。


「Go!Go!Go!Go!Go!」


この深い打球に和田は3塁から悠々とホームイン。さらに1点追加。

しかし、まだ攻撃の手は緩められない。

2アウト1・2塁で、高木。セカンドゴロに抑えられて、3アウト。チェンジ。




6回表、


大きな、大きな、大きな3点が入った。


ホントにいける。絶対に勝てる。文字では表せぬような歓喜の大声が出ていた。


残り、4イニング、頼むぞ。


6回裏、殊勲打の石井がサードへ回る。サードのフェルナンデスが1塁へ。マウンドには引き続き、松坂が登る。先頭は井口。ライトフライに抑えて、1アウト。続くはいまだ1安打に封じている松中。ここで二遊間を抜かれる久しぶりのヒットを放たれてしまう。1アウト1塁で、先ほどHRの城島。粘られるも何とか、ライトフライに抑えて、2アウト。そして、バルデスも空振り三振に抑えて、3アウト。松坂が底力を見せつける。

7回表、マウンドには依然、新垣。先頭の小関はサードゴロ、赤田は空振り三振で、あっさりと2アウト。フェルナンデスもファーストファウルフライで三者凡退。あと3イニング、気が気じゃない時間が続く。

7回裏、あと3イニング。中3日の松坂はここで降板。代わってマウンドに上がったのは、長田秀一郎。最後、豊田につなげるまで、必死の継投を見せていく。
先頭のズレータはショートフライ。鳥越には粘りに粘られた挙句、フォアボールを与えて、1アウト1塁。ここで迎えた川粼は見逃し三振に抑えて2アウト。
この場面でライオンズはピッチャー交代。柴原を迎える場面で、星野智樹が登板。その柴原との対戦はセンター前へ抜かれて、2アウト1・2塁のピンチに。
そして、宮地に代わって、代打に出てきたのは左殺し大道典嘉。大道がコールされると同時にピッチャー交代。小野寺力がマウンドへ。
「長い…。これが優勝への苦しさか…」
投球練習が終わり、小野寺vs大道に。大道は初球を打ってきて、レフトへのいい当たり。しかし、和田の真正面。何とかレフトフライに抑えて、この回はゼロに抑えた。あと2イニング、これが続くのか…。キツイ。

8回表、新垣は投げ続ける。そして、先ほどの回に代打に入った大道に代わって、荒金久雄がライトに入る。先頭はカブレラの打順。しかし、何と代打がコールされる。柴田博之が打席へ。期待できないと思っていたが、やっぱり空振り三振で1アウト。続いては和田。ショートゴロに倒れて、2アウト。続いては殊勲打を放った石井もセカンドゴロで再び、三者凡退。もう攻撃はほとんど頭にない。いかにこの点差を守り抜くか、それだけに祈りをこめ続ける闘いが続く。

8回裏、マウンドには続けて、小野寺が上がる。勝負の鍵を握るホークスのクリーンアップに打席が回る。先頭は井口。1-1からの3球目。井口が打った打球がセンター方向へグーーーーーンと伸びていき、あっと言う間にスタンドへ。これで、リードはわずかに1点。もう一発打たれたら同点(同点で12回を終われば、規定によりホークスの優勝になる)。そんな怖さが常に隣り合わせに。もう目の前のダルマに祈りっぱなしになる。
続いては、先ほど久しぶりにヒットを打った松中。ここはセンターフライに打ち取り、1アウト。しかし、気の抜けぬ状態は続く。先制HRの城島。2-3からフォアボールを与えて、1アウト1塁。荒木コーチがマウンドへ向かい、伊東監督がピッチャーの交代をコールする。この場面、少し早いが気持ちの中では、「豊田を出してくれ、豊田しか抑え切れない」そんな感情が沸く。

そして、コール。
「ライオンズのピッチャー、小野寺に代わりまして、豊田。ピッチャーは豊田。背番号20」
完全に気持ちが一致した。ここで、守護神・豊田清がマウンドへ登る。最終戦、捨て身の投手起用。

投球練習を終えて、いつもの儀式。

それを終えて、対するはバルデス
1球目は空振り。2球目も空振り。あっさりと追い込む。3球目、ストライク!何と3球三振で2アウト。続いてはズレータ
初球は空振り。2球目はライトへの大きな当たり。ポール際に飛ぶ。しかし、内野スタンドにギリギリで入り、ファール。ひとつ胸をなでおろす。そして、3球目。豊田のボールにズレータはハーフスイング。これを1塁塁審が空振りのジャッジ。連続の3球三振で3アウト。これで、8回が終わった。いよいよ、あと1イニング抑えれば、長年の悲願がかなう。しかも、もう豊田はマウンドである。締めてくれ、頼むから締めてくれ。そして、9回の攻防へ向かう。

9回表、中4日ながら、新垣は何と9回のマウンドへ。先頭の中島は空振り三振、野田も見逃し三振、高木もファーストファウルフライに倒れて三者凡退。もう、この回の攻撃はどうでもいい、いよいよ、ラストイニング。ゼロに抑えれば、歓喜の瞬間が待っている。

その瞬間のために、豊田が引き続いてマウンドに上がる……



9回裏、守備が交代。サードのポジションに石井に代わって、上田浩明が入る。
そして、豊田はもう一度、いつもの儀式。

先頭は当たっている鳥越。しかし、もともとは非力なバッター、大丈夫だろう。
初球は1塁側スタンドへファウル。
ライトからは必死の声援が聞こえてくる
2球目、鳥越が打った打球は何とレフト方向へ。

「取れ!取れ!取れ!」


しかし、スタンド全体が沸いている。ヒットというのがわかった。しかも、鳥越はセカンドに向かっている。
「刺してくれ〜〜〜〜〜〜!」

そんな願いもむなしく、鳥越は2塁まで到達。ノーアウト2塁のピンチとなる。

続いては川粼。
初球をピッチャー前にバント。キャッチした瞬間には間に合わない。1塁送球で、1アウト3塁の大ピンチに。

もう、こちらは手を組んで、祈るしかない。
「頼む。抑えてくれ」

バッターは柴原。
初球は3塁方向へ大きなファウル。


2球目。








柴原のバットが一閃。上田が飛び込むも届かず、願いむなしく打球はレフト前へ。これで、まさかの同点劇。あと1イニングの希望がすべて吹き飛んだ、同点。


勝利の希望が吹き飛んだ。

しかし、まだ敗戦が決まったわけではない。この回を抑えなければならない。




続くは途中交代の荒金に代わって、代打・出口雄大
初球は空振り。
2球目も空振り。
3球目はボール。
4球目は、ハーフスイング。これを1塁塁審がスイングと取って、三振で2アウト。



そして、ここからである。クリーンアップ。

3番井口。
初球はボール。
2球目は空振り。
3球目はボール。
4球目もボールで1-3。
5球目は3塁側のファウルグラウンドへ。
6球目。

打球がライト方向へ上がる。


「大丈夫。取れる……



ん?」




小関が必死で追っている。


「取れ!追いつけ!取れ!」


しかし、無情にも小関の手前でワンバウンド。小関がキャッチして、ホームへ投げ返すと、1塁ランナーの柴原は3塁ストップ。



2アウト2・3塁。究極のサヨナラのピンチとなる。




ここで、バッターは松中。

もう、こちらは祈る手の握りが非常に強くなっている。



「頼む。ここまで来て負けるのは、死んでもイヤだ。抑えてくれ、何としても抑えてくれ」


ライトというか、スタンド全体からは今までに聞いたことがないような大声援が飛んでくる。



初球、1塁線へファウルボール。

2球目。ボール。

3球目は3塁側ベンチへ転がるファールで2-1。

4球目、松中の打球はセカンドの正面へ。

「きっちり、取れよ」

セカンドから1塁へ転送され、セカンドゴロ。

3アウト。

何とかしのいだ。しのぎきった。


俺たちはまだ、死んでいない。




しかし、同点には追いつかれている。しかし、4番のカブレラ、殊勲打を放った石井は下がり、代わりに出ているのは柴田と上田。この2人はキツイ。

さらにピッチャー陣は豊田ももう、投げてしまって、他のピッチャーも相当投げてしまっている。


延長12回まで、つまりは残り3イニングで1点を取らなければ、それは敗北を意味する。そして、サヨナラの危機も常につきまわっている。



正直、苦しい。


「誰が打つんだよ…、誰が投げるんだよ…」




そんな不安が付きまといながら、最後の聖戦は延長戦へ突入する…



10回表、代打に出た出口はライトへ。そして、マウンドには守護神・三瀬幸司が登る。過去2試合、打った記憶はない。

その不安の中、先頭の小関がジーパン刑事のテーマが流れる中、打席へ向かう。

初球、ストライク。
2球目はファウルであっさりと2-0に追い込まれる。
3球目はボール。
4球目、ハーフスイングもボール。
5球目は自打球でファウル。
そして、6球目…

小関が叩いた打球は1塁線に。

松中のジャンプが届いていない、しかも、1塁塁審と右翼線審はフェアのジャッジ。


「よし、よし、よし、よしっ!!!」



小関はそれを見て、2塁へと向かう。
ここに来ての2ベースヒット。2塁ランナーの小関に代わって、代走に俊足・高波文一が入る。



バッターは赤田。

赤田の登場で、ボクは夢中で旗を振っている。


当然のバント。



「決めてくれ…」


初球はボール。
2球目、1塁線のバントがファウルに。
3球目、ファースト前のバント。打球のほぼ、アンツーカーとの境のあたりに落としたので、送球はファーストへ。

バント成功、1アウト3塁。



そして、打席にはフェルナンデス。ネクストは柴田。

100%の敬遠。しょうがない。



4球外れ、フォアボールに。これで1アウト1・3塁。




柴田では無理。もちろん代打が告げられる。


「4番、柴田に代わりまして、バッター犬伏。バッターは犬伏。背番号64」



忘れていた。この男がいた。左殺し犬伏稔昌



これが最後のチャンス。声を枯らして声援を送る。





その初球……



犬伏の振りぬいた打球はセンター方向へ。そこまで浅くはない。かといって、刺されないという距離でもない。


しかし、打ち上げた途端に犠牲フライを確信。



センター柴原のキャッチとともに3塁ランナーの高波がスタート。




「GO!GO!GO!GO!GO!GO!GO!!!!!!!」



高波がホームに還ってくると同時にセンターからの送球も帰ってくる。


ボールが還ってきたのは高波のスライディングのあと。




1点勝ち越し。


「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」



もう、何があっても大丈夫。ここで、もう確信した。充分。




続く和田を迎える段階で2アウト2塁。ネクストは上田のため、和田も敬遠。2アウト1・2塁となる。

ここでバッターは守備職人・上田。できれば、もう1点欲しい。
初球はファウル。2球目は空振り。3球目はボール。4球目もボールで2-2。5球目は1塁線にファウル。6球目、ファーストゴロとなって、3アウト。



貴重な、貴重な、貴重な1点が入った。



今度こそ、勝てる。そんな思いを持って、裏の守備へ。




「ライオンズ、選手の交代をお知らせいたします。
ピッチャー、豊田に代わりまして、石井貴。ピッチャーは石井。背番号21」



マウンドには、初戦の先発という重責を担った、最年長投手・石井貴が延長10回裏のマウンドに登る。そして、代走の高波はそのまま、ライトのポジションへ。


投げる金剛力士像の真骨頂を見せてくれ。




延長10回裏、先頭は城島。
初球打ちはセンターフライ。

これで、1アウト。

続いてはバルデス。まだ、気は抜けない。
初球はボール。
2球目は3塁側スタンドへファウル。
3球目はボール。
4球目はバックネットへファウル。これで、2-2。
5球目。ファーストゴロ、さばいたフェルナンデスはカバーの石井へトス。これで2アウト。


あと1人で、夢がかなう。

少ないレフトのライオンズファンからは貴コールが飛ぶ。

ここで、迎えるはズレータ
初球は大きく外れて、ボール。
2球目も大外れでボール。
無理はするな。一振りで追いつかれては元も子もない。
そんな思いをくんでか、
3球目も外へボール。
4球目も外へ。

ほぼ、敬遠のフォアボールで、ズレータが出塁、代わって、本間満が入る。
そして、続くバッター鳥越へ。



その初球。




鳥越が打った打球はセカンド・高木浩之の正面へ。




そして、そのボールはファーストのフェルナンデスへ送られる。




「やった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!」




決まった。西武ライオンズ、2年ぶり15回目の優勝!!!!!!!



選手がマウンドへ一目散へと走る。





そして、その光景を目にしながら、ボクの目には光るものが…。






その後、すぐに、マウンドを中心に輪ができる。




今、幾度もつらい思いをさせられてきたホークスの目の前で、そして、福岡の地で、ライオンズの胴上げという、まさに長年の夢が叶う瞬間が…。



伊東監督が宙を舞う。


「わ〜〜〜っしょい!わ〜〜〜っしょい!わ〜〜〜っしょい!わ〜〜〜っしょい!」

4度宙を舞った。

勝ったんだ。そう、俺たちは勝ったんだ!!!!!!!


それを実感しながら、伊東監督の優勝監督インタビューへ。



福岡ドームで敵チームの声が響くのは初めてじゃないか?と思いつつ、インタビューに聞き入る。


インタビューが終わり、レフトスタンド上段から伊東コール。


それが終わると早速、ペナントが渡される。


そして、そのペナントを選手たちが持って、こちらへ向かってくる。

勝利の証を持って。若い選手たちがスタンドとともにその勝利を喜び合う。



それが終わると、マウンド付近でペナントを持って記念撮影へ。しかし、後ろしか見えていないんで、まったく様子がわからない。


記念撮影の中、スタンドは二次会へ。


長い、長い二次会。旗も相当長いこと振っていたんで、それが終わると、ホントに疲労感がドッと出てきた。しかし、そんな中でも、レフトスタンドの仲間たちと喜びを分かち合う。

「あ〜、勝ったんだ」



そんなことを思いながら球場から撤収。




そして、祝勝会(ビールかけ)が行われる、隣接のシーホークホテルへ。


45分程度くらい待ったかな。選手が出てくるエレベーターホールのところで待っていると優勝記念のTシャツに身を包んだ選手が登場。一人ひとりにコールをしながら見送る。


そして、ビールかけが行われている横で、うちらは勝手に盛り上がる。


はえらいことになってるんだろうなぁと思いつつ…


ビールかけが終わって、誰も居なくなったビールかけ会場を隙間から撮影。相当な残骸が残ってました。




それが終わると、仲間たちと百道地区の方面へ。途中コンビニでいくらか缶ビールを購入し、近くの海の方へ。


そこでは、非常にささやかなビールかけをしたり、海の方へ向かったり、そして、しばらく騒いだあと、夜が明けるまで、とにかく話し込む。




そして、夜が明けて、百道から天神へ帰り、実家へ。


帰ってきて、朝めしを食べたあと、自分の部屋に戻って、今までの疲労感と徹夜のダメージから即刻爆睡。


昼まで眠ったあと、片づけをして、東京に帰ることに。





福岡空港に行って、スカイメイトで帰るために航空券を取ろうとしたら、



「選手便がこの次の便みたいですよ」



と、いうことでその選手便に乗ることに。その便の近くの時間になって、搭乗口に行ってみると、すぐそばに昨日優勝を果たした選手たちがそばに。軽くドキドキしつつ、搭乗。そして、東京へ向かう。






これにて、プレーオフ第2ステージは終わり。

この歓喜の優勝からわずか5日後、もう名古屋で中日ドラゴンズとの日本シリーズが待っている。果たして、どうなることやら。

ここからは後日談。映像を見てたんですが、中継を録画していたのがSports-i ESPN。ものすごくホークス寄りの実況で、非常にイライラしました。こんなことなら、NHK BSの方を録画しておけばよかったと非常に後悔してます。実況・解説のホークス勝て的な口調はぶっ飛ばしてやろうかって思いますよ。ホント。まぁ、それが負けてんだから、バ〜カって思いが正直なところですが。